2018年、テックビューロ代表朝山貴生より新年のご挨拶
1月4日、ビットコインが9歳の誕生日を迎えました。紆余曲折を経ながら、止まることなく動き続けるビットコインは、昨年2017年も様々なドラマを生み出しました。これを読んで下さっている皆様には、その勢いがいかに凄まじいものであったかは、説明の必要さえないことでしょう。
おかげさまで、テックビューロ株式会社が運営する仮想通貨取引所Zaifは、昨年10月1日に無事近畿財務局に登録を完了し、晴れて公認の交換所となりました。その代表を務める傍ら、ブロックチェーン推進協会BCCCの副代表理事や、日本仮想通貨事業者協会JCBAの理事を務めさせていただくほか、NEM財団の理事にも就任させていただき、私の発言が採る立場によって各所に少なからずとも影響がでる状況になって参りました。そのため、あえて弊社やサービスのウェブサイトではなく、この個人ブログを復活させて、少しばかり遅くなってしまいましたが、私の2018年所感をこちらにまとめて俯瞰的に綴らせていただく事としました。
長年ビットコインの成長を見守り、サービス開発で共に歩んできた我々事業者にすれば、それら昨年のドラマも長い道のりに起こった出来事の一つと捉えやすいものですが、昨年の仮想通貨ブームの到来に伴う利用者の爆発的な急増により、価格の暴騰などビットコインの本質以外にばかり目が向きがちです。
そしてその裏では、またしても「ビットコイン終わり」記事が三が日から一般ウェブメディアを飾るなど、もう何年も繰り返されてきている陳腐化した考察が再び一般読者層を巡るという始末です。
2015年から2016年にかけてバズが発生した「ブロックチェーン」に関しましても、それへの便乗を狙った企業のほとんどの名前を聞かなくなりました。上記記事では同様に「ブロックチェーン終わり」と書かれておりましたが、実質これほどブロックチェーン技術が進化し成長した年はなかったため、終わったのは単に浅はかにブームに乗ろうとした人たちの熱でしょう。
そして2017年には3つめの波であるICOが来ました。それにも一枚噛みたい人々の情熱はすさまじく、投資家層から起業家層まで、暗号通貨、ブロックチェーンに次いで、ICOに参加したことのないアナリストやICO実施経験の無いコンサルを含め、第三の「オレがICO仕切る」の波が来ています。そして、それらが健全な普及やビジネスの成長を阻害しています。まだ、利益やプロジェクト応援が目的で素直にICOトークンを購入されるかたの方がよほど純粋にICOを受け入れていると言えるでしょう。
界隈には、長年ビットコインやブロックチェーン技術、そしてICOについて客観的にかつ論理的に考察をされているような私も情報ソースとして信頼できる方が何人かはいらっしゃいますが、SNSやブログ記事では彼らにも激しい向かい風がおこり、メジャー紙では彼らの言葉がそのまま取り上げられることは稀です。今ではこの3つのテーマは純粋に有益な、かつ正しい情報を判断して抽出することさえ難しいものになってしまっております。
同時に、一般的に有識者とされる方達の予想やコメントも、我々からすると周回遅れの話や、最悪の場合は虚偽の情報に見えがちであり、それらを追っているだけではブロックチェーンの未来は見えないでしょう。特に、ほとんどの最新の情報は英語圏で発生し、それらが全て翻訳されるとも限らないため、日本語の情報を追うだけは間違った情報を信じるリスクが格段に高まります。これは、利益を追求する人の機会損失についても同様の事が言えます。
私は、20年以上テクノロジー事業に携わる一経営者としての観点から、この4年間ずっとブロックチェーン全般を俯瞰的に見て、その経済圏を取り込むべく大きな絵でのサービスを事業化しようと心がけて参りました。よって以下の所感は、その視点からのものであることをあらかじめご理解下さい。
トークンエコノミーの本格化
過去のプレスリリースを漁っていただけますとお分かりの通り、我々は2016年からずっとトークンエコノミーが到来していると言い続けています。ブロックチェーン上で発行されたトークンの量と価値が増大し、それらが流通する大きな経済圏ができるという意味です。
実際に2016年のエイプリルフールには、弊社取引所ZaifでZAIFトークンを発行し、それを真っ先に市場流通させましたが、現在では多くの方のご支援を頂いて時価総額150億円前後と立派な仮想通貨の一つとなっております。いわば企業トークンの先駆けと言えます。
ちなみに、利用者に愛称が付けられることがありますが、正しくは取引所が「Zaif」で、トークン名は全て大文字の「ZAIF」と区別しております。
そして同年の秋には、世界に先駆けてICOをテーマにしたテレビ番組「ビットガールズ」を地上派の東京MXにて放映いたしました。こちらは女性タレントの電子トレーディングカードをトークン化して、ICOしようという画期的な企画であり、まだICOが世間に知れていないこの時期に、実に2,500万円を売り上げ、時価総額は最大7,000万円程までに膨らみ、トークンビジネスの可能性を身を以て指し示しました。残念ながら、製作会社による同プロジェクトの競争原理の具現化が振るわず、番組は半年で終了することとなり、同時に関連トークンの取引も終了せざるを得なくなりました。しかし、その機会に一ICOをスタートから終了まで経験させていただいたことは、弊社にとって掛け替えのない経験となりました。最後まで付き合って下さった利用者の皆様には心より感謝申し上げます。いつか、同様のICOプロジェクトがまたできれば良いなとも考えております。
さて、私は常日頃、実用の面から見た、ビットコインが生み出したブロックチェーン技術最大の特徴は、「デジタルの希少性」、「絶対的な真贋性」、そして「絶対的な所有権」であり、その最大の改革が 「デジタルデータ」から「デジタル資産」への進化である、と話しております。
現在の仮想通貨時価総額の増大の要因を単なるブームやバブルと宣う記事が多いですがか、その裏ではICOを中心に、上記「デジタル資産革命」の流れによる実経済アセットのトークン化が加速していることを忘れてはならないでしょう。
我々はすでに、2016年度から企業トークンの発行支援を実施しておりますが、既に上場企業であるフィスコ、ネクス、カイカ(旧SJI)の3社がトークンを配布し、それぞれの株主に向けて配布されており、それらがZaifにて取引されております。3社は日本でも先駆けてトークンの配布を実施しており、それぞれの時価総額は30億円、32億円、125億円に至ります。これらも、長期にわたって保有者が増えることによるネットワーク効果と3社の人気により、そのトークン価値が保たれ、結果的に新たな経済チャンネルを通して株主への大きな還元になっていると思われます。これら企業トークンはいまからでも遅くありません。是非御社でもご検討を。
今年はそれらICOトークンを含め、不動産から債権、金融商品まで、様々な現実経済のアセットが次々とトークン化され、各ブロックチェーン上に更に流入してくるでしょう。
一方、2017年は遂にビットコインのETFが登場しました。トークン化とは逆に、今年はブロックチェーンアセットが次々と既存市場で金融商品化され、更にその流動化が進むでしょう。
しかし、それらの流動は、今年はまだトークン化方向への流量が著しくその逆の流量を上回り、現在86兆円まで成長した仮想通貨の時価総額は、増減を繰り返しながら更に何倍か大きく膨らむでしょう。新規参入のユーザー増加を含め、2018年も続いて仮想通貨が熱い年となりそうですね。
各ブロックチェーンの今後
ビットコインはスケーラビリティ問題から、2017年はフォーク問題へと発展したわけですが、2018年はセカンド・レイヤー(高速道路のようなものです)の技術がようやく表に出始めることとなり、我々取引所による同技術の採用が進み、ビットコインの流動化が更に進むと思われます。
よく、「ビットコインは通貨として云々」という記事が繰り返し見かけられますが、そもそもその議論はナンセンスであると考えておりまして、非中央集権化されたデジタルアセットの決済ネットワークの先駆けとして、そして軸足となる暗号通貨として、その価値は今年もさらに向上を続けると考えられます。
残念ながら既にあるビットコインに乗っているカウンターパーティーなどのトークン向けプロトコルは、ベースとなるビットコインの問題に振り回されて、トークンの主流をEthereumに奪われがちであり、かつビットコイン上でコントラクトを実装するようなRootstockのような技術もようやく始動し始めたばかりです。よって、まだ今年はビットコインはそのドミナンス(全仮想通貨の時価総額のうち、ビットコインのそれが占める割合)を下げることがあったとしても、ブロックチェーンアセット交換と保存の軸足としての役割を続けると考えられます。
Ethereumにつきましては、2016年から2017年にかけたICO分野の加速的な成長において、既に様々なネットワーク上のキャパシティ問題が露見しています。しかし、すでに複数の解決策が示されており、それら問題を乗り越えつつ、そして中期にわたってそのキャパシティを拡大しつつ、ますますトークン基盤としてのポジションを固めながら非中央集権化されたアプリケーション(Dapps)の普及も進むでしょう。
しかしその主流2つのブロックチェーンについての流れは、2016年から予想されていた話でもあり、ほとんどの2018年所感で見られるような「ビットコインとイーサリアムの真価が問われる」と言ったようなことは、私の考えではもう去年の話です。
それら2つについては、すでに表に見える以上の価値の増大と流動を生み出しているため、それらの価値はもう認めざるを得ないでしょう。「実用的でない」と言う話も単に解決すべき成長痛が主であり、今年はさらなるアプリケーション層の充実とそれを捌ききるためのスケール拡大が同時に進めば、否定している多くの人がその存在価値を受け入れざるを得ない状況がくるどころか、知らないうちにそれらに触れている一般層のユーザーが爆発的に増えることでしょう。
次には、手前味噌ではありますがNEMは今年に大きな成長を遂げると考えています。価値の記録、中心となるデジタルアセットとしてのビットコインに対して、コントラクトによる非中央集権化されたアプリケーション基盤となるEthereum。それらに次いで、私はNEMがトークンベースのコントラクト基盤になりうると見ています。NEMのプロトコルは、トークンをベースにそれに必要な最大公約数がプロトコルとして実装されており、同じ結果を求める場合、通常のコントラクトであれば百人百様となり、瑕疵のリスクも高くなりますが、NEMプロトコルでは最小限の工数で簡単にコントラクトが組めるようになります。もうすぐプライベートブロックチェーン製品mijinでCatapultバージョンが一般公開されますから、是非それはそちらでお試し頂きたいところです。
今年のブロックチェーンのもう一つの大きなテーマとしては、「アトミックスワップ」というものが上記様々なチェーン上で動くものとして世に出てきます。普通、複数人数間で物々交換取引する場合、その交換が全く同時に発生すると言う事はありえません。映画のお決まりの人質交換シーンのように、片側がちゃんと要求に応えないということもあるわけです。アトミックスワップは、その交換が物理的に同時に発生します。
CatapultバージョンのNEMプロトコルでは、そのアセットのアトミックスワップが標準的に実装されます。ですので、トークン同士やトークンとXEMの交換が、第三者の仲介無しに実行できるだけではなく、XEMを持っていなくても、第三者にその手続きのネットワーク手数料を肩代わりさせる、といったことも出来るようになります。
現在、主要なブロックチェーンのスケール拡大には、ビッグブロック化(処理できるサイズ自体を増やしてしまう)、セカンドレイヤー(高速道路作る)、シャーディング(分散して処理する)、オフチェーン(ブロックチェーンの外で処理)といった手法が採用されようとしていますが、NEMとテックビューロのmijinでは、あえてパブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーンの連動、という手法でスケールさせるというビジョンを持っています。当然先の未来は非中央集権化されたアプリケーションが普及するでしょうが、通常は企業は自社内ネットワークに、自社のサービスを構築します。NEMとmijinはその、現実的なちょっと先の未来に対応すべく独自の手法を採っています。
一般的には、このブロックチェーンがあのブロックチェーンより優れているからこちらが良い、といったように、排他的な競争のように見えるかも知れません。実際には仮想通貨の観点からは当然パイの奪い合いも多少あるかもしれませんが、今年には上記3つにかかわらず、複数のブロックチェーンがそれぞれの役割を果たしていくということがより浸透してくるでしょう。
ICOを実施したプロジェクトには、COSMOSやPolcadotのように、それら複数チェーン間を繋ぐようないわゆる「インターチェーン」もしか「クロスチェーン」技術を謳うものも増えてきました。我々テックビューロがICOを実施したCOMSAもその一つです。
それぞれのチェーンがそれぞれの役割を果たし、各チェーン間でも暗号通貨やトークンが行き来して、より効率良く価値が交換され、アプリケーションが稼働していく。2018年はそんな未来が近づく年になりそうです。
我々が推すmijinとNEMのNEMプロトコルは、Ethereumのような柔軟で複雑なDapps(非中央集権化されたアプリケーション)は構築できないものの、最速で基本的な8割の商行為を開発実装し、超高速で処理できるブロックチェーン基盤として、第三のメインストリームとなるべく努力しています。
そして、2017年には幸いNEMに対する評価が大きく向上し、その指標の一つとしての時価総額も皆様の評価のおかげで大きく成長いたしました。どの暗号通貨も同じですが、時価総額は単なる利益をもたらす指標ではなく、各プロジェクトを応援するコミュニティメンバーがより多くの時間をそのプロジェクトのサポートに割くための余裕を与えるという意味では重要な要素となります。2017年には、その成果としてタケノコ状にNEMを用いたサービスが開発され、世に出始めました。私的には、2018年はNEMが花咲く年であると考えています。
NEMはテックビューロがコントロールしている、といったような心ない虚偽の書き込みも散見しますが、NEMは立派なコミュニティ運営のブロックチェーンプロジェクトです。我々テックビューロは、2015年の時点でそのコア開発者を雇用し、大きな賭けとして投資することによって、新バージョンのCatapultエンジンを具現化したまでです。企業体とオープンソースコミュニティが上手く連動することは希ですが、現在NEM財団とテックビューロ、そして世界中のNEMコミュニティメンバーの皆様は、お互いぶつかることなく、高い効率でNEMプロトコルの普及に尽力しています。
2018年は、その3つが創り出すエコシステムの回転が更に加速し、NEMプロトコルを活用したサービスが増えて行く中、弊社製品もその波に乗りつつ大きく世に送り出されます。
商用ブロックチェーン製品
2015年から様々なブロックチェーン製品が発表された中、エンタープライズ向けとして頻繁に名前を聞くものが、Hyperledger Fabricや、R3といった大手が参加するブロックチェーンプロジェクトです。ですが、まだまだ実用というところまでには到達してません。
実は、我々のmijinも、商用ブロックチェーン製品で世界市場を狙っています。2015年9月に世界に先駆けて商用のプライベートブロックチェーン製品mijinを発表して以来、様々な実証実験を発表して参りましたが、表に出ない案件を含め実に300社以上に同製品をご利用頂きました。そしてついには2017年のジビエ協会の実用ケースに始まり、発表を伴わずとも既に数多くの実用ケースが世に出ております。実質的には、弊社製品mijinは、ブロックチェーンの実用では一歩先を進んでいると自負しております。
そしてついに2018年にはクラウド型BaaS(Blockchain as a Service)としてmijinの一般向け商用サービスが開始される他、Catapultに至ってはオープンソース公開が控えており、今年には我々自身が「ブロックチェーン=実証実験」から「ブロックチェーン=実用」へと皆様の印象を変える起爆剤の役割を担えると考えております。
mijinは既に一通り銀行勘定システム、電子マネー、トレーサビリティ、社内セキュリティ、認証技術、といったようなほとんどの適用分野での実証を終えておりまして、本格的に商用の販売が始まる2018年は、それら技術を先行して採用したものが、より多きな恩恵を得た、と言っていただける年にしたいと考えております。
プライベートブロックチェーンの有益性についてはまだ賛否両論ですが、論より証拠、今年はそれらが一気に浸透すると考えています。よく考えて頂きたいのは、mijinは、既に世界的に利用されているパブリックブロックチェーンNEMを構築した人間が、同じビジョンの元でテックビューロ内で作ったプライベートブロックチェーン製品であり、我々なりの論理に基づいてメリットを打ち出した上で製品化しているという点です。ですから、我々は「プライベートブロックチェーンに意味はない」と言われるほど、この市場にはチャンスがあるとしか思えないのです。その存在意義があることを理解した上で作っているわけですから、今年はその誤解が世界中でひっくり返ることを従業員一同楽しみにしております。
弊社製品をドメスティックなガラパゴス製品と揶揄する者も見かけますが、そもそもmijinは国際的なチームで開発され、世界中のNEMコミュニティのフィードバックを受け、世界各地でNEMと共にPRが実施され、日本国外のプロジェクトが多くを占めます。
mijinは既に2年以上実用に耐える商品として存在しておりますが、その事がやっと2018年に公然の事実として認められる時が来ます。我々も一気にその普及を狙うべく、世界4拠点にてNEMのコミュニティとともにプロモーションと販売に尽力して参りますので、引き続きご支援ほど何卒よろしくお願いいたします。
ICOの今後
投資家の方から経営者の方まで、実に数多くの方のICOに関する年初の所感も拝見しましたが、その9割が私と逆の意見でした。
ほとんどのそれは、2018年にICOプロジェクトが数多く実施され、それが花咲く年という表現が多かったのですが、それらは2017年頭に話すべき周回遅れの内容でしょう。すでに各国でのレギュレーションが今までにない速度で制定され始めており、特に日本国内のICOは安易に実施できない環境となってしまいましたので、日本ではマスなICOが乱立する前に間口が狭まることになります。
それでもまだ平気でICOの広告出稿をしたり、安易に実施を謳ったりしている国内案件に関しましては、政府関係各所には全く相談せず、最低限守るべきルールもしらないまま進めているということになり、トークン購入者にもそれなりのリスクがあるということになります。
現在の方向性としましては、国内取引所での上場を前提にICOを実施する場合、国内での交換所登録をするか、登録済みの交換所が提供するICOソリューションの利用が前提となります。
これら関係各所がルール作りの方向へ加速した理由の一つとして、不正なICOの台頭というものがあります。すでに、メディアを欺いてまで調達金額を偽装し、実際以上の人気と流動性と見せかけて、初値の高騰を誘導したり、プライベートセールと称してあらかじめ大幅なディスカウントで不透明な数量を配布したりする案件といったような、関係各所が現行の金融商品やそれに関わる法律に照らし合わせた上では「相場操縦」に値するようなものも見受けられます。更には、全ての常識的なルールを無視して、配当を謳うなどして資金を集める案件などがでてきておりますが、これらは完全に有価証券法に抵触するものです。
特に大型案件を謳いつつも、振り替え方式などを採って完全にブロックチェーン上で完結していないICOについては、今後のガイドラインでも求められるであろうルールと同様に、過去の実施であってもユーザー側から購入に関する全てのトランザクションデータ公開を求められるのが良いでしょう。お客様の手で、今後のICOの健全化や他のお客様の安全に貢献することができる。是非その事を知っていて下さい。
実は、我々が実施したCOMSAのICOも、コントラクトアドレスを公開した形式を取らず、ダッシュボードにて各ユーザーにアドレスを発行するという形式を取り、かつ、一部のユーザーはZaif取引所からの振り替えではないため、ブロックチェーン上で第三者が監査できるものではありませんでした。そこで、近日全ての購入トランザクションを一般公開する予定です。それにより、我々がCOMSAで売り上げて公表していた95ミリオンドルという金額が、トランザクションベースで随時計算され、正確に集計されたものであることを皆様に客観的に見ていただけることになります。
ちなみに、それら情報を偽装する悪質な案件の見分け方としては、発表されているデータとネット上のアクティビティ値との乖離を見る、という方法もあります。日本円にして数十億円、ドルにして数十ミリオンを売り上げるような大型ICOは、その人気のため何らかの障害が発生します。そのような大金には、それぐらいの重みが何らかの形でのしかかってくると言うわけです。StatusなどEthereumネットワークが詰まり遅延が発生するものもいくつもありますし、我々のCOMSAのトークンセールでは、ダッシュボードに秒間1万リクエストというDDoS攻撃にも匹敵するようなリクエストが3日続き、ちゃんとご購入いただけなかった数多くのお客様にご迷惑をお掛けしました。また、それら大型案件ではSlackやTelegram、ツイッターといったオンラインのコミュニティやソーシャルメディアで、ユーザーによる一定数以上のアクティビティが発生します。結果ICOも人の活動の集合であるため、それらアクティビティ無しには、大きな資金が集まり得ないということです。
また、公開情報から統計的な異常値を見る、と言う方法もあります。例えば、人数と調達金額が公開されている場合、過去の人数と金額の相関関係グラフを作成してプロットすればその異常具合が目に見えます。もしくは、振替方式の場合、振り替える前にお客様の資金を預かるコールドウォレットの残高と調達結果の金額を比較する手もあるでしょう。すなわち、ない袖は振れないということですね。
すなわちICOとは、オンラインのコミュニティとその活動に支えられるため、発行者では操作出来ない、一定のマスによるアクティビティ値が存在するわけで、偽装による異常も実は検知しやすいという特徴を持っているという事です。
国内においては、弊社も協力しておりますが、今年早々にも一定のガイドラインが敷かれ、トークン購入者自らがそのような防御をせずとも、先述の通りICOに対する一定の敷居が上がります。すなわち、それは同時に中小ビジネスがICOを実施する旨みがますますなくなっていくことを指します。
そもそも数億円未満レベルの小規模ICOであれば、その準備コストがICOの結果に対して割に合わなくなるかも知れません。まずは交換業登録もしくは交換業によるソリューション利用が前提であり、ガイドラインに沿ったビジネスモデル、データの公開、トークン設計、ホワイトペーパーもそれらに準拠せねばならなくなります。それらを回避して海外風ICOに見せかけても、海外取引所の取り扱いには1取引所あたり10万ドルから20万ドルはかかってしまいますから、実際の流動性確保にも大きな予算が必要となり本末転倒です。
当然、先述のような数値の偽装なども今後は困難になりますし、一定のルールによって売り出し価格の設定やCAP(販売数上限)の設定が必要となってくるため、トークン購入者の初動利益は今までのそれに比較して低くなっていく可能性が高くなります。
2017年 12月は、初めて1ヶ月あたりのICO調達額が世界で合計1ビリオンドル、日本円でも1,000億を超えたようですが、上記のような理由から2018年の金額的な成長は、2017年の劇的なそれにくらべて鈍化せざるを得ないでしょう。ただし、上述の理由からも、リスクの高い小粒なICOは姿を消していき、中規模の腰の重いICOが中心となっていくと考えられます。
中にはマスにICOを請け負うサービスも国外にいくつかありますが、結果質の低いICOが大量生産されるだけではなく、それらのほとんどに取引所の流動性が担保されない他、そもそものプロジェクトやトークンの設計が緩く、トークンの価値が維持できないものが量産されるだけになります。ですので、いわゆるオートメーションされたICOプラットフォーム、というのは、もともとDEX(非中央集権化された取引所)を実装したプロトコル上で実施でもしない限り、そう流行ることはないと考えております。さらに事実として、世の中のトークン取引のほとんどは、オンチェーンでなく、取引所と言ったオフチェーンの環境で行われているということです。
この劇的な流れの中、我々テックビューロでも、昨年12月に実施を予定していたICOが2018年にずれこむことを受け入れざるを得なくなりました。我々は各所から要求されるルールやガイドライン作りにリアルタイムに応えながら、それらICO実施の準備を進めています。すなわち、外部要因にて次々とウェイトが肩にのしかかってきているわけですが、実際にはそれらをしらみつぶしに解決しつつ実施へと向かっておりますので、実質的には今までになく速いスピードで前進しております。
ここで皆様にお詫びせざるを得ない点は、情報の配信や開示についても、それらガイドラインの制定と並行しながら慎重にならざるを得ないということです。そして、ICOを実施するそれらクライアントが上場企業であればなおさらのことです。従うべきルールが既に設定済のものであれば、我々はそれに準拠しつつ情報を配信するということができるわけですが、要求に応じながら制作を継続しているという段階では、なかなか明確な基準がわかりにくく、様々な活動を必要以上に控えざるを得ない、ということになります。
しかし、数万人のCOMSAトークンセール参加者の皆様のご期待に添えるよう、今目の前にある山を乗り越え、以前想定されていたよりも大きな結果を持って、皆様にお返しできるよう尽力して参ります。
2018年のミッション
弊社のミッションとしては、このトークンエコノミーにおいて皆様に未来のビジョンを共有しながら、現在からちょっと先の実用において最大の貢献をしたい、というものがあります。しかしながらそれを実現するには数年単位で先を読み、多額の投資をし、多大なる準備をせねばなりません。
2014年にZaifでビットコイン取引所事業に参入し、2015年からプライベートブロックチェーン製品mijinを発表し、2017年にはICOソリューションCOMSAの提供を開始しました。
これらを並び替えるとすれば、我々は「価値の創造=ICO」と「価値の流動=Zaif」そしてその「価値のプライベート利用(内部勘定)=mijin」の手順を一社で引き受けることができるということになります。我々は数年かかって培ってきたこの一連のConduit(じょうご)の仕組みを持って、弊社クライアントや取引所ユーザーの皆様に、さらに多くのメリットをもたらすべく今年も尽力して参ります。
実は、COMSAのホワイトペーパーにあるプランは、もともと我々が2014年から描いていたビジョンであり、ICOという流れにそれを載せて、たまたまより多くの方に知っていただく事ができました。しかし、2018年には、その絵にまだ欠けている2つのピースを発表する予定ですのでご期待下さい。
2018年は、ブロックチェーン関連サービスを総合的に提供する企業として、更にその未来を皆様と築いて参りたいと思います。
テックビューロが今年から設定するコーポレートメッセージは、昨年、40年以上もご活躍されるとある海外アーティストの方に個人的に頂いて感動したこの言葉です。
「Manifest your minimum into your maximum」
意訳するとすれば、「あなたの最小限を以て、最大限として具現化する」。それを、あらゆる分野で弊社顧客の皆様やサービス利用者の皆様に対しても実現できるよう、従業員一同と共に邁進して参りますので、今年も何卒宜しくお願いいたします。
テックビューロ株式会社
代表取締役
朝山貴生